連載小説 静まりし2つの羽根 5

第 12話

慣性航行に浮かぶ花火
よみの世界の進行はもはや至るところに見え始め、その聖域、サンクチュアリの勢図すら
塗り替え始めていた。
三種の囲みによる黄泉との並行社会は何をうむのだろうか。
イエムは世界は同じだ!!一つだと何度も叫んだ。
そのあっちの世界のイエム、こっちの世界のイエムという事に無性に苛立ちをおぼえ始め
やりきれないジレンマの只中にいた。
成果主義でおりなす社会に置いてその意味するところは大きかった。
なんだかタイミング違いでもう一つのところで成果がたな上げされる。
何十年もかけ種をまき、地をならし、育て、育み謳歌の夏をむかえんばかりと
なったところですり替えがおきてしまう。
偽物のアイデンティティーと実際のそうい、ギャップは突然彼をすり替え対象として襲う。
それは赤い糸、縁の不足によるものと思えてならなかった。
一見、イエムを取り巻く社会はしがらみだらけのように思える。
だがしかし、仮想空間、仮想社会で培われた成果は、実際の世界との縁を生むものではない。
大きくならしたクマンバチの土壌に、ひめゆりが咲くようなものに似ている。
そんな儚い成果さえもイエムを拒む。
蜜を探し、さまようクマンバチのそれは格好の言い訳になる。
広がりゆく黄泉の世界は、その色と方針を黄に染めつつあった。
そのようなバーチャリアリティーとバーチャ貨幣論でしか資本効果を発揮しえないような環境の
信頼のもろくも崩れやすさにあきあきした人類の結論と言えよう。
情報化社会の信憑性とその真意性すら徐々に過小評価されはじめ、そのような最低限の環境を
扱う、ツールが投げ売りされ初め、バーゲン籠の一部に置かれるようになっていた。
それは投資詐欺を呼び込み、債権放棄がある社会でのみ扱われる一時の環境と扱われて
それがなになにの世界だと呼ばれるのに相違なかろうと思われていた。
どうにか逆転できないか
レクの焦りが広がる。
青の淡き炎がけしかけのろうそくに見えかけ
今日も工業ベルトはぎりぎりの生産体制で回る。
イエムはその自分の本性というものについてどう考察しえるのか。
信仰というものと切れない縁と、その蒼きフキノトウに湧き上がる嫌汚感が隠しきれないで
いた。
信仰ベルトの補助として、積立金保証の杖と投資がそれを導き、生命のベクトルには関係なく
それは働き、そしてその日の突然の花火が起こったとしても
もはや不思議はないのではないか。
火災積立金保険や地震保険、そして傷害保険
そのようなひびの暮らしから出る保証金が、その花火から守られる理由にはなるだろうね。
だがそれが青の軍資金に当てられるという事が許されるかどうかの問題だ。
サンクチュアリのサンスクリットは人と神が自然としてできるその三者の隔たりは
自然と世界を広げやがて距離を適度に保てる状態となって安定するだろう。
赤き職人気質の人の生み出す工芸はそのわずかに空いた隙間に入り込み
行き場を失った人が新世界を望む気持ちを表す箱庭産業に現れる事になる。
その時、もつ死後の世界の恐怖がところどころにできた世界不審の中の世界と
噛み合い
やがてそれは慣性運行がなされる世界まで成長していく。
忘れてはならないのは人それぞれのもつ人生、個人という事だ。
レクは消えかけたタバコの灰を投げ捨てると
擦り切れた靴の紐を結び、ようやくルナの森の隣の人家に辿り着いた。
                        ーーつづくーー
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