Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根 第11話
「形成と人参」
イエムの母が台所で煮っ転がしを作っている。
イエムはいつもの古文書をゆっくり読んでいた。
「富士の裾野にススキあふるるとき、紅富士一機一様となし裏富士をつくるなり、
それを逆さということなかれ」
イエムには今一つ意味がわからなかった。
イエムの父は言った。
逆さに物事を捉える事はなかなか難しいことさ。
統制を逆転させるとその気候も方角も南北が変わるからね。
室町時代には南北朝という足利尊氏の作った幕府時代があったらしい。
僕もよくは知らないが南と北に政権が二分された事が歴史の過渡期には
起こったんだよ。
イエムの母が言った、戦争のない世の中で良かったわ。
イエムはおもむろにCDを取り出すとそれを鳴らした。
音楽なんて事を12月にはあんまりやらないものよと
母は料理をしながら忙しそうにイエムに言った。
12月だからみんなピリピリしてるから
こころにゆとりを持って欲しいからかけるんじゃないか。
フルートの音色が部屋いっぱいに広がった。
イチジクは春に実のなる果物よね。
イエムの母は何か思いありげに下を向きながら言った。
イエムの父は明日搬入する建築資材のカタログをめくっていた。
忘れ物があっちゃ大変なんだ。
高さをつけるにはベジェ曲線を起こしクロソイド曲線の軌跡を求めなければなりません
それが慣性航行のGというものであります。
イエムは要は面と面を合わせて重心をとるだけだろとかおもった。
よく朝、学校に行くと先生が大声で
「THIS IS A PEN!!」
と怒鳴った。
ミサイル発射失敗、ミサイル発射失敗と
テレビでは連呼していた。