Subeatleoの自作ルーム

 

連載小説 静まりし二つの羽根 第17話

旋回と出会い

イエムは左にしかまわらない体を窮屈によじりながら塔をのぼっていく。
そこには美しい赤い石の結晶がまるで雪のつぶてのように徐々に芯から張り出して
形成されている。
僕の体が、この地球とこのルビーの石に融和したとき、僕はもう一度あの母のところ  
に帰れるのだろうか。
イエムの母はツミレ団子を作っている。
イワシの切り身をそぎ、それにネギと小麦粉を混ぜて捏ねている。
イエムの母は言った。
「空と大陸と地下ってそれだけで三次元よね。」
レクの父は言った。
「いやそれは単に高度の違いだよ。」
高度だけならイエムの今いる地下の塔の方がはるかに高いわね。
わしはしらん。
その時、レクはサンディーを追いかけて海沿いの道を進んでいた。
僕がサンディーに出会ったのは今から2年前だった。
あの砂漠の一件だ。
俺のサンディーはもはや水と一緒で俺にとってなくてはならない。
レクは買ったおにぎりの包みをあけると一気に食べてそのあと
またファーストフード店に突入した。
心の渇きをごまかすように。
レクの乗るレンタカーのカーナビゲーションが行き先を照らしている。
三重寺北、レクは白いTシャツに着替えるとすこし海に近づいた。
浜辺では数人のカップルが海水浴を楽しんでいる。
太陽がじりじりと照らしている。
波をしばらくみつめたあと再びレクは車に乗り込んだ。
レクの姿は何か世界に時を刻む巨石のようになっていた。
今ならまだサンディーに追いつける。
そんなことを考えるとレクに黄色い声を誰かが浴びせかけてきた。
「あんたこの海の近くの人?」
「そうだけど。」
レクはとっさに嘘をついてしまった。
「この近くで一人でも泊まれる民宿ってあるかしら?」
レクはその子に視線を投げかけた。
小麦色の肌、大きな胸、いかにも海の人のような感じだ。
君の名は?
「マリナ」
「そうかー おれはレクっていうんだ。」
なにか妙に呼吸がすでに合わさっていた。
レクはしばらく考えるとこっちは車だし
この近くの観光案内所までのせていけばいいと思った。
「おれで良ければ案内所までのせていくけど」
ありがと。
暑いしもうどうしようかと思っていたのよ。
じゃあ行こう。
なんだかレクは嬉しい気持ちでいっぱいだった。

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