Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根2 第1話
背水
これはフィクションです。
史実や現実ではなく空想を楽しむ人の為に書いています。
遥か太古の昔、地上には四つの神が存在した。
全治神ゼラルド、唯の神アトモス、仏心デュオそして逆転神サルーインである。
世界は度重なる戦火につつまれ
全知神ゼラルドが世界を統一しかけたかに見えた。
だが逆転神サルーインは消えかけたが、レクとイエムの活躍で
その身体を取り戻し
世界は徐々にその均衡をとりもどし再びカオスに包まれた。
そしてサルーインは再び眠りについたが
同時にセキトという時をつかさどる神が生まれた。
セキトは度重なる時空修復のために活躍しその心はちりじりになった。
そしてその火を司る神エノシと、時をつかさどる神、ダイムに姿を変えた。
だがその事の為に度重なる時空移動を行ったひずみから黄泉の世界が目覚め
闇の王、ミラスが目覚め、この世に7つの神が存在するようになった。
時は過ぎ
全知神ゼラルドは12万の兵で黄泉の世界、ハスラパスを目指していた。
そしてその事に気づいた黄泉の王、ミラスはわずか4万の兵で
ザカエブリッジでミラスの兵と対峙していた。
イエム、このままだと戦争になっちゃうよ。
少女、サリナは不安そうにイエムに語り掛けた。
イエムは困ったように古文書のページをめくっていた。
もしも射影がひだりにうごくなら
黄泉の王の世界にゼラルドは引き込まれてしまうかもしれない。
太陽から一筋に伸びたかげが昼の二時にまっすぐに九の字を描いていた。
生なる者と黄泉を行くものの長い葛藤はきっと空まで続いているのだろう。
心が弱気になればなるほど黄泉の世界は広がっていく。
レクが呟いた。
生けるものが勝たねばならない。
ゼラルドは雄たけびをあげた。
ながらくかかっていたブリッジの修復が終わったのだ。
イエムはふと感じた、ゼラルドの覇気が前よりも増している。
きっと騎士道に目覚めたのさ
壁のばばあはつぶやいた。
御守道というやつか?
レクは言った。
きっとそうだろう。
以前のゼラルドは単なる水だった。その質量は流動的ですべてが12使途の力によって支えられていた。
だが今はそのザカエブリッジの工作で培った力はボルテージを増し
騎士道がその胸に宿り、御守の力を得たのだろう。
天道、しかず、義にしかず
黄泉なるはその陰なり
流れる涙は我が心
そして知るはすべて肉体、頼るはわが鋼の心
ミラスは悲しそうな顔しながらもその剣を抜いた。
参謀は助言した。
いまは時にあらずです、まだ満ちていませぬ、今出ればるいるい屍の山となりまする。
境界を張らせましょう。
ザカエブリッジの裏にゲートをはりそこを火の王のもとへ送らせましょう。
しかし、自然結界は偶然の産物です。
神の力なくば開けませぬ。
ルナの心なくば
神は涙を流すまい。
イエムは古文書をとりだすと自分の不思議だったあの世界樹の旅の事を思い出していた。
あの時みたイエムの魚の蘇るゆめの中に
ひとつの記憶がよみがえった。
深い深い湖の底に落ちしあの夜の事だ。
赤く染まった視界はたちどころに青にかわった。
イエムにとってはまさに驚きだった。
あれが黄泉への疎通なのかと思っていた。
ゼラルドはつぶやいた。
特定の者にしか見えぬ世界もあるのだな。
もしもあの海の中にしずめた悲しみがあるとするなら
ゼラルドは兵を返した。
そして一路、骨董市の模型を探した。
置き去りにした悲しみと
ルナの心を現世に戻すためだったのか知る人は居ない。
梅雨のあの夜、湿度は67パーセントを超えていた。
怒涛のうなりが聞こえる。
何かの機械音なのか。
奇跡が二度起きるとするなら君は何を信じる。
冥福を祈る事以外に。
必死にイエムは一路、骨董商の元へ向かった。
もしも、あのルナが呼び戻されるなら
君は今頃、ドアを開いているに違いない。
イエムが骨董商を訪れるとかべのばばあはありもしないことを喋りだした。
赤福、大福、青福とはね
三重になるといういみのさ。
ほんとか?
さぁねどうだかね。
今何時だい坊や
イエムにしたら単なる自分の部屋だった。
だが自分の家はすでに
南北に分離し
自然結界ができていたのだ。
そして骨董商から帰ると右の部屋は南につながり
左の部屋は北へと続く道だったのだ。
つまり今までのはすべてが黄泉の霊障。
だとすれば?
俺の部屋のものを姉の寝室にうごかすと
骨董商に出していると霊が思い
また引き上げるともっていかれたと思うのか。
その通りだよ。
何も恐れる必要はない。
かべのばばあがぼそりと言った。
なら作った骨董品はすべて売られてはいなかった。
部品を中古市で買って組み立てるんだ。
意識失いかけながらね。
イエムはうなずいた。
だって僕、ものも思い出も大切にする方なんだ。
昔の物も思い出も捨てきれなくて
ついつい昔の良かった時の自分ばかり思い出しちゃうんだよ
だからやってる帽子の人はみんな不思議がってたと思うよ。
まあこの円盤さえあればあとは骨董品を買えば神がなんとか
してくれるんだよ。
円盤はぼくはこれが出された瞬間からなんども植えたり抜いたりしたから
呆れちゃってるみたいだけど。
イエムはわらった。
円盤もう傷が入って割れかけちゃってるけどね。
闇の王は眉をしかめた。
これが最後だ!
すでにイエムは夢と太陽の度重なる巡転で意識を失いながらも
ルナを組み上げていた。
あとはこれにルナの魂を宿すだけだったんだよ。
あの時の魚のよみがえりは
そうそいうわけ。
魚さん男かな?女かな?
ルナって言ったら女に決まってるでしょが
イエムは胸を張った。
ちなみにあいなめなんかしたことないけど
母は包丁とぎながら言ってたけどね。
そうすると坊やに聞きたいことがある。
ルナが目覚めると僕ら太陽神はどこへ行くんだい?
お風呂につかるんじゃないかな~。
その時である。
セキトのかけらが動き出した。
汝、ルナを救いしものよ
我はエノシ、御とばのかげに身をおくもの。
炎はわがマスラオなりてその羅針を貫く定め。
汝にさずけしわがコンパスのなれの果てなり
われなくしては飛行はままならぬぞ。
道なき道を行くはわがきみなりて
汝にあらず。
我が汝のお供を仕ろう。
困ったな~
みんな入っちゃえ。
その時である轟音の響く音がした。
ココアが入ったね。
エノシよ汝は炎のかけら我が分身なり
ゼラルドは怒りで刀をぶち折った。
そもそも草薙というは村雲のともなり
くもなくばなかぬそらなりて
悲しみ深かばふかきほどその太刀は石しゅうを両断するものなり。
太刀鋭しといえどもその周をかえりみざるものなり。
わが月の導は衆をみかたとしその涙ここにあらずというは
土偶の太刀に似たるがごとし。
空セミにかわりしあの夜
エリスの事だけを思い出していた。
レクはバーボンの酔いに浸っていた。
山の深き道にアスファルトだけを頼りに草花を押し分け進んだ。
何万種というこの生が大橋とその道に添えられていた。
その木は次第に弱り果てていた。
雨なくばその根だす力もなく
おおくばその足元は凍えた。
根をだす道は他にもなくただ耐えるしかなかった。
この土こそが我の足元を温めるものなりと信じて疑わなかった。
川のいぶきが聞こえる頃
空が次第に晴れた。
大橋を渡る頃には心は白く白く無に帰した。
衆を知る、人を知るは人道ゆえ
しゅうのことばこそそれが愛であると迷わず進んだ。
次第に仏が姿を現した。
何本もの香がたずさわっていた。
帰り際、寺の和尚が鐘ついた。
何のはじまりだったかは今でもわからない。
さぁ雨が上がった。
エノシは告げた。
イエムはちょっと咳き込んだ。
ぼくね、思った事があるけど死んだらどうなるのかとか
でもね何度も生きてる人も川を渡ったり、また川に飛こんで水浴びする人もいるでしょ
危険じゃないのかなってずっと思ってたけど
ちゃんと周りの注意に耳を傾けてれば危険じゃないんだよね。
僕も川で遊んだり、釣りをしたりするのが好きで
夏は気持ちよかった。
堤防のこれから水を流しますよってアナウンスがあって
その時は必死に逃げたよ。
人間なんて突然死ぬもんじゃないと思うよ
それまでにはどこか弱っててみんなわかってるんだよ。
だから冥福を祈って毎日まじめにやりましょうねって
思うんだ。
この小説のタイトルもそうだけどね。
自分の葬式にかかる曲なんですかって聞かれたけど
全然想像もつかないや。
だって僕まだ生きてるもん。
それに死ぬ理由なんて一つもないしただ今なんだか
生と死との狭間に置かれてる気分になっちゃったよ。
レクは悩んでいた。
結界がまさかそこに張ってあるなんて言えやしない。