Subeatleoの自作ルーム

 

連載小説 静まりし二つの羽根2 第15話

扇への誘い

イエムはゆっくりと顔を上げた。そこにあるという事、そこにないという事。 明確なる答えが胸の中を熱くする。 ひらひらとピンクの花びらが黄緑色の芝の絨毯に舞い落ちている。 有するという意味、無するという意味。 虚空の中の真なる答え。 二つのコンピューターの中の二つに分かれた物神の結界が再びそれを真にする。 レッドに染まった天井の伏木がたちどころに青に変わってゆく。 その時、レクはいよいよ次元流を抜け出しつつあった。 とめどない暗黒の流れが渦を巻きそれが下へ下へと沈んでいく。 時の流れは時に逆行し、また回転を曲げる。 その時流の描く曲線が正方向に流れるとき、暗黒流は動から静に転ずる。 レクは足に絡まる黒い礫から足を引き抜くと、一気に駆け出した。 そして大きくジャンプした。 不整展退、無味光明。 青々と茂るケヤキ林に突き抜けた。 分離されたケヤキの根をみつめるとそれは地中深くまで届いているようだった。 一つに足りなく、マイナスには及ばない。 マイノリティーの中で人は呼吸し、力を合わせ生きる。 永遠に続く螺旋の階段を昇っていくとき人は真空を見る。 レクは息苦しくなり、体から汗が噴き出す。 おもむろにダイスを取り出した。 剣の目。 レクはもう戦わない事を決意していた。 だが残酷にもダイスは剣を弾き出した。 どこからかすーっと冷たい風が辺りを包む。 ここを両断するには端と端の真ん中を二つに切るしかない。 只中にある暗黒を掴む。 引き寄せられた時空は収縮し、次元は12面体から6面体へと姿を変える。 運命とは残酷だ。 余するところの有は少数であり。 少数とは限りなくつづく数字の旅だ。 その真ん中を掴みこむことが話して可能なのか。 山のように空間が隆起していく。 ポイントがつかめない。これはまさに扇だ。  

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