Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根2 第18話
影昇る
闇の王ミラスは復活の時を待っていた。まわりにはった次元結界のなかで息を潜めていた。 ザカエブリッジのゲートが開かれる一瞬の隙をついて一気にその兵は平原へと進出を始めた。 その目的は次元城ダイムの征服である。 このかけた三日月をみよ。 時の流れは過酷である。時は影を必要としている。 目覚めた3元と偽りの3元がどちらも存在するには我々の力が必要なのだ。 その真がいなであり、かつその真が否でない場合。それは双璧のコンフリクトを生む。 生と死、矛盾したこの二つの相対。 黄泉なるは生の影代なのか。 ぼんやりと浮かんだ月がほんのりと揺れる。 世界は今、眠りし源流を求めている。 時が影を望むように月は水をはせる。 聖水にかえれ!ゼラルドよ。 黄泉の王、ミラスは息巻いた。 その瞬間である。 7道を征くゼラルドに変化が起きた。 過去に眠りについたはずの12使たちが続々とゼラルドの元に集まってきたのだ。 ミラスの帰還はどうやらこの世界を再びカオスに導いたようだ。 川のせせらぎが澄み渡るしずくとなって緩やかに流れだす。 ゼラルドはそのまま月を仰いだ。 そして我、一人の子であり、親である。 天地神明に誓い聖なる者たちを生に導く。 平原の没落と源流の復興は世界を更に複雑によりカオスへと導いていた。 この大地、母なる丘にたどりついたレクはその母の影が0になる時、次元流を抜け ここにたどり着いた。 丘を降りて月の見える麓の街にたどり着くとそこは4元がその存在を感じさせぬほど 透明にそして正確に機能している世界だった。 母の影が0になる時、つまり母に母の影が宿るときそれはダイムの次元結界の変化を生じさせ その扉は開き、その機動は狭間の楕円を描きながらあたかも正規の機動を逸したように感じさせながらそれは余弦を貫いた。 これはすべてダイムが仕組んだレンズシフトだっていうのか。 そうとしか思えん。 つまり予め確立された舞台に我々は立たされ、精密に計算された焦点の上でダンスを踊っていた。 2つの焦点はその平原とその源流を返し、見事にその機動を楕円に仕上げた。 とんだデングリ返しってわけだ。 レクはつぶやいた。 そしてダイスを振った。 ダイスの目は雨である。 俺はもう一度、ザカエブリッジに戻る。 母のその影の母ってやつが一なのか0なのか確かめなきゃなんない。 ーつづく