Subeatleoの自作ルーム

 

連載小説 静まりし二つの羽根2 第19話

足された三元と偽りの三元

  2階に佇む消された月の面影。 どこかレクはその余韻に浸っていた。 2つの焦点が徐々にその軌道を明らかにしてゆく。 綻びかけた月がほんのり雲の間から姿をのぞかせている。 当初からある三元と足された三元。 どこか備えのない神々が寂しく笑った。 初期の三元はもう一元上に出るために三元を足した。 4元に移された世界が正常に歯車を動かす。 そしてゼラルドは6つになった空間で思案に暮れていた。 やはり12使徒を復活させ、再び空間を20にすべきか。 消えた一階の散り散りになった使徒たちは4つの使いを捨てていた。 5本の傘を広げた時、2階と一階とそしてその中間に元が広がった。 イエムはそこには己の二乗と一本の傘を残し、3つの使いを捨ててしまったと この時、心のどこかで後悔していた。 31種の使いと15本の傘があるのは明確に見えていた。 すこし手を伸ばせば、あの時、追いかけ背中を抱きしめていたなら。 だがこれは蜃気楼だったのだ。 頭を冷やせ、レクが呟いた。 イエムは暗がりの中を傘を探し、さまよった。 あの時の凱旋門が幻のように思えていた。 町並みは夏を惜しむようにまた秋を迎え入れるように空気が少しオレンジの風に 揺れていた。 ふと気づくと湿度が徐々に上がっていく。 イエムは少し立ちくらみしながら 頭を横に振り、紅茶を煽った。 喉に香ばしい赤き葉のしずくが流れてゆく。 思考が早まる。 冷静に手探りで自分に残された傘の数を数える。 2本しかない、、。 足された三元 は4階を生み出したかに見えたが あくまで2階だったのだ。 外には三つ巴になった三つの傘が残り 使徒たちは何かその捨てた使徒たちの影に怯えているようだった。 イエムは家に帰ると祭壇に手を慎重に合わせて祈った。 世界の統合は思った以上に加速しているのか レクは心のどこかで気づいていた。 大雑把に見てるだけさ 月が笑った。 重なりあった虹色のかかったあの空がどこか懐かしく思えた。 ーつづく  

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