Subeatleoの自作ルーム

 

連載小説 静まりし二つの羽根2 第21話

重なりあった手、消された3角

  レクは全力でタイムトンネルを抜けた後、そこに映しだされたビジョンを眺めていた。 何かそれはナスカの地上絵に似ていた。 ザカエブリッジの白い壁が見えてきた。 その時、ギアをトップに入れようとした瞬間、そのギアを掴んだ手に手が重なった。 イエムの声が聞こえた。 このままでいよう。 たしかにストックは一歩前に出されたように見えた。 重なりもタイムトンネルの向こうまでの距離もしっかり見えていたし 最小限度のここまでのストックは2あるように思えた。 もう少しこのままで確かにいることができる。 無理に橋をこせなくてもその最大種はあと3つ余裕があるはずだ。 しかしそれは幻影だった。 四元においてこれを考えた場合、その最大種はあと3つ足されるべきなのだ。 眠っている場合じゃない。 レクは静止した手を振りきった。 その累乗の和がぶつかり合って浄化作用が起きるからだ。 2つと一つの掛け合いでイエムもやっとそこで気づいた。 もう一個、ストックを作らなきゃ。 最小のONEが見え出す。 これでいいのかな。 素性を問う事なく、ストックに三つ余裕ができる。 赤いバンクの影が見え出す。 もしもこのまま2つを失うことがあっても 三元の一つに余裕が生まれる。 ブラインド化された窓に蒸気でき、水泡がたまった。 雨の日のドライブはいいよな。 暗闇のドライブも最高。 結局、今の俺に必要なのはシャドーだ。 僕もだ。 妙に心の中でイエムは感動の涙にあふれていた。 橋にたどり着いた時、レクは三回、ブレーキをポンピングすると そこで停止した。 未来のビジョンを覗いてみると 影に残されたレコード盤とバンカーとストッカーがそれぞれそこで機能しているようにみえた。 これはひょっとして今かもしれない。 どんな流れでそれを築いていったか覚えてなきゃそれが未来のようになっちゃうだろうよ。 未来って? 将来のことさ。 あれが将来だったのかな。 正負を間違えりゃそうなるさ。 誰だってそんなの許しはしない。 ごめん。 レクはぷーっとタバコを吹かした。 窓ガラスが全く曇らずにその煙はどこかに消えていった。 便利になったもんだ。 本当だね。 流れた時に逆転を起こしやすいんだ。 右と左、よく見てその移動をしっかり覚えることだ。 単なる写し間違えるなんてね。 斜影に出てくるような美人がいりゃ話は別だがな。 今のイエムはどうやら左利きになってしまったらしい。 慣性航行の歴史はその空間の移動を移動と感じさせないところにその危うさがあると テレビが力説していた。 イエムの母親は鳥の和物を作っていた。 ささみをむいたあとが大事なのよ。 何か納得していた。 ーつづく  

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