Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根2 第4話
停戦
紺碧の空に一つの雲が標的であるかのようにふわふわと浮いている。 ゼラルドの兵が駆け抜け疾走して行く。 炎の王エノシがきびすを返す。 もう戦争が始まってしまう。 イエムは目を閉じた。 最後まで諦めないで ルナの優しい声が響いた。 湖ににわかに波紋が広がった。 そしてどこからか、弦楽器の奏でる優しいリズムが広がった。 この音は、 月がその輝きを増す。 なんとも言えない音だった。 レクはつぶやいた。 「心に染みる音だ。」 イ短調のワルツが左右に共鳴していく。 二人の王は、少し静止するとため息をついた。 無駄に人が死にゆくばかりだな。 ゼラルドはその剣を鞘に収めた。 そしてやがて二人の兵はちりじりになった。 炎の王よ、月の奏でに救われたな。 その頃、闇の王は、見事にできた結界に酔いしれていた。 ルナが蘇ったか。 その一面に裏富士の赤いシルエットが湖面に映し出されていた。 その横を一筋の風が疾走して行く。 時を司る王、ダイムの陣だった。 この次元のゆがみを正さなければならぬ。 イエムの部屋にできた結界は東西、南北に伸びていた。 やがて春が訪れた。 桜が一面に咲き乱れている。 はらりとヒトヒラの花びらが舞った。 なんと不思議な事だろう、その花びら1片は風に吹かれたかと思うと消えた。 そこにレクが丁度、辿り着いた。 扉は閉ざされた。 黄泉の王よ、ミラスよ、ゼラルドは高笑いした。 その時、ゼラルドの足元にヒトヒラの花びらが、舞い降りた。 ダイムの並行推移棒により、ミラスへ続く、第一の扉、センクウが閉じられてしまったのだ。 その鉄条網の厚き事、三万タービンである。 その頃、イエムは家に戻っていた。