Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根 第26話
雨の決戦
蒸し暑い夏の空気の中でレクは深呼吸した。
俺の振ってきたダイスと水中花が刻んだレコード。
アジア料理の小籠包と言うらしい。
この桜時計というやつは砂時計によく似ている
どこからかエディーの歌声が聞こえてきた
レクは大きな櫟の木の下で子供の頃過ごした夏を思い出していた。
船主が汽笛を鳴らす度に波止場の老人は驚いたような顔をする。
砂時計が落ちる、最後の砂塵の質量も、最初の砂塵の質量も皆同じだ。
時の砂に質量が変わる瞬間はありえない。
竜巻?
レクはダイスの水中花を見守りながら、また落ちきった砂時計をひっくり返す。
どこからかサッカーの青年の笑顔が見える。
細胞組織がそこに時間を刻むのはその代謝が束縛されるかららしい。
出口がなくなれば代謝は止まり、制止は凝固を生む。
ドリブルで、これが二度目だとしたら?
ゾーンか。
バスケか。
でもミラクルパスみたいなのがあるのだろ?
そんなのあったかしら。
我ながらくだらない筋かきを描いているな。
レクのミラクルとは何なのか?
もっか実演中と声を忍ばせた。
あんたが作ろうとした時限ていうのはカウントダウンの事なのかい?
いや単なる写し絵だよ。
色即是空、イエムが大きな声でお経を読んでいるのが聞こえる。
しゃりほつむにぶつ
太陽の日差しが恋しいな
奇跡を信じるしかないんじゃないか?
リズムが時刻だって言うのかい?
慣性航行のなす同時性がそろそろ恐怖視されはじめてる。
レクはおもむろにまたダイスを振った。
あの轟音が?
轟音ってなに?
トドロク音。
トドロク?
ふるえるように響き渡るってことだよ。
雷か。
レクはガードマンをしていた頃の夏を思い出していた。
自由。
ダイスの出目、6。
自由?
ただそれだけ?
他に何か?
なんか責任ない人みたい。
レクは遊びつかれたような目で遠くをみていた。
自由を背負う責任はある。
桜の樹みたことある?
あるよ。
ほんとに?
ないと思った?
魚は泳いでた?
わからないな,なんのことか。
レクは言った。
僕は今自由かもしれない。
イエムの寝息が聞こえる。
質量の回転と原子の回転、分子の離脱
液体の凝固と水の波紋。
湿度が80を越えていた。。
レクは言った。
ミラクルはどうやら氷結じゃ解決できないもんだいなのか。
絶対に時間は停止しないわよ。
そのアメジスト買ってやったの俺だ。
ただ全体を全体が回してるにすぎないと?。
ミラクル。
勝利者が弱者を審議しその失敗を嘲笑い貪る、どれもこれもはらわたが煮えくり返る。
アメジストが輝きをましている。
静かに下に流れていた水とそれを掴もうとする子供の群れが回転体となっている。
俺のミラクルはマイノリティーだから起きる。
そのままかな。
そうそのまま
そのままなら扉は開く。
ミラクルの?
そうだ。
ジャンクの中から?
ジャンクかジャンクじゃないかなんて俺にはわからない。
だからプレゼントしてるの?
そうじゃないけど。
もう俺だけの世界じゃないんだこれは。
そう君だけのレクじゃない。
イエムは寝息をたてた。
そのまま雨足は強くなっていった。