Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根 第27話
7重の魂
レクは近くにいながらもエディーに少しでも触れる事はなかった。
そしてレクは黙ってエディーのもとを離れた。
これ以上は居てはいけないと思ったのだ。
エディーがシューベルトの交響曲に針を落としたとき
レクにとって何か始まるような気がしたのだ。
宇宙の紐理論ではその帯は一周して自分のもとへたどり着くはずだと言う。
レクが恋に臆病になるのは過去の恋にも原因がある。
レクはとにかくこれ以上大切な人を暗闇に落としたくはなかった。
そういう気持ちだったのだ。
世界全員が敵だと思ったとき、レクは懐に刀を頂いた。
その刀のせいかレクは今まできわどいかけにはすべて勝利を得た。
がその代償は大きかった。
世のセオリーそれは奪えば奪われるという事。
エディーのその優しさがレクの手を一センチも触れさせる事はなかったのだ。
レクは部屋に帰り、うがいをした。
洗面所の水が勢いよく飛び出した。
冷たい水でレクはこすりつけるように顔を洗った。
俺はダイスを振り続ける。
ダイスが運命をいざなう。
運命がおれの行動を開く。
かたわらのノラ猫があくびをした。
冷蔵庫を開くとたべかけのショートケーキがでてきた。
レクはそれを拾い上げるとお茶を煎れた。
その時電話がなった。
シモンのマネージャー
のサミールからだった。
サミールは言った。
お酒は飲まないのかい?
ああ俺はあまり。
弱くはないんだろ?
ああ。
弱くはない。
じゃ~バーに来いよ。
一杯おごってやる。
ああいい遠慮しとく。
レクはサミールの誘いを断った。
傍らに聖書が置いてある。
あれこんなところに聖書が。
誰だろ、シモンが置いてったのかな。
レクは聖書を開いた。
レクの中の聖書はその内容を読むたびに変えていた。
どうやら俺の人生は異次元と異次元の移動でできているらしい。
ダイスを振った。
ダイスは雷と蜘蛛で静止していた。
レクは部屋を出るとロビーで新聞を読んだ。
聖教徒の先生一人が昨日から行方不明になっていると
書かれていた。
名は、ジュシア・バルバラシア。
その顔写真を見るとレクはどこか見覚えのある顔だなと思った。
レクは少し小走りに宿を出ると
丘を目指した。
小高い丘の上でバルバラシアは微笑んだ。
ここがあなたのYESを問う場所になるわ。
レクの心臓の音は丘をのぼりきったせいか
クライマックスに達していた。
血流が右心室を抜けて左心房へ流れ込む。
暑い夏の日差し。
丘のかがやき。
決戦のダービーは何度になるかわからないほど丘は気高く高い。
希望の丘と地元のターフをどこかレクは心にシクロさせていた。
「大丈夫ですか?」
ええ。
バルバラシアは深いため息をついた。
ここを降りて何にか温かいものをとりましょう。
いえ私の灯火が残ってますからもう少しここにいさせてください。
夏の日差しが気高い丘に流れ込む。
しおれた花を落としたあじさいの花がげんなりしている。
しばらくすると教会の鐘の音が響いてきた。
ありがとう、あなた親切な人ね。
バラはなにかを思いとどめたようだ。
俺はレクっていうんだ。しがない旅人さ。あなたは?
バラとでも読んで頂いて結構よ。
じゃバラさんよろしく。
ちかくにあったチューリップにバラは井戸から水を汲み水をやった。
スプラッシュがすっとはねて360度回ると花は威勢を取り戻した。