Subeatleoの自作ルーム

 

連載小説 静まりし二つの羽根 第28話

色即是空

イエムは今日も回廊を登る。
水中花は色彩を変え、徐々にそのシルエットを漆黒に推移させていた。
何万後年という先にある恒星の光がこの星にパワーを届けている。
赤い水晶の石碑の前でイエムはセキトの絵をしっかりと描き出した。
それはまるで磨き抜かれた龍のようでもあった。
あとは花飾りか~。
山桜の花にシャッターをイエムは入れた。山桜はすこし照れたように青い葉で自分を隠している。
牡丹があざやかにピンクのシルエットでそこに咲いている。
イエムはその写真をつなぎ合わせて背景に重ねた。
その瞬間空の青が花に解けて花飾りは完成した。
レクはダイスの水中花を見守りながらわらった。
ダイスを4時間ごとにおれは振る、その逆を考えれば時を刻む時間の区切りは6時間。
レクの頭の中で式が完成していく。
3分の4×πrの二乗
パラダイム9の完成か。
レクはおかしくなったのかダイスを晴れ渡るビーチに置き換えた。
白き砂浜。
これもサルーインを意識して世界が是空を得た結果なのか。
イエムはまだ石碑を今日も読み解く。
父が言った。
今日はお稲荷さんの日か?イエム。
イエムはちょっとなんか体が重くてしんどいなと思っていた。
勉強に一段落するとイエムはごろりと布団に横になった。
力がすーっと抜けてまわりがなんだかゆるやかに回転しているような
気がした。
万有引力のGと完成ワープは人類の夢であります。
アナウンサーが絶叫していた。
汽笛がなって船の出向が近づいてるんだなとイエムは思った。
次の船の出る岬はどこだろう。
そして旅人はどこへ向かうのだろう。
何を目指すのだろう。
イエムはなんとか船内テレビが見たかった。
できるかもね。
母親は湯葉の鍋を作りながら笑っていた。

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