第2話「炎の大地、サファイアモンド」
我は眠る、ルビーの回廊にて
サルーインの眠りは深い。
イエムは徐々に石段をあがっていく。
森の冷たい空気と笛の音が神聖な雰囲気を醸し出している。
よこにあったシダの葉がかぜにゆれ、
その上に乗ったしずくが一つ地面に落ちた。
その頃、レクは炎の大地、
サファイアモンドの宿で目を覚ました。
そのままレクは居酒屋に立ち寄る事にした。
ここサファイアモンドは漁港である。
各地の魚が市に寄せられ、
昼はせわしなく市で賑わっている。
もしもあの時、
イエムが動かしたタイムマシーンが動くなら
もう一度、バルバラシアに会いたいもんだ。
今の二人はすっかり
もう他人の立ち位置になってしまっている。
真逆と言ってもいいだろう。
二人の心のすれ違いを感じたレクは
また旅に出てしまったのだ。
居酒屋のおやじが話しかけてきた。
今日の魚はうまいぜ。
イサギのいいのがあるぜ。
イサギ?
そうさこれの刺し身はうまいぜ。
レクは手持ちの5百ドルを
差し出したこれしかないんだが。
その半分もかかりはしない。
親父は100ドルを受け取ると料理を始めた。
隣の席ではどこかの流しの歌手がギターを弾いいている。
「遠い、遠い悲しみの向こうの星よ、
その淡いビロードで私を空に連れてって?♪」
とつぜん一人の親父が喧嘩を始めた。
「だめだめだ、テンでばらばらだ。」
「あんたの打ったのはこの白いコマだろ」
「いや俺の打ったのは黒の駒だ」
「ふざけんな白がうごいてんじゃねーか」
「おれは白は動かしてはいない」
「てめー酔ってからかってんじゃねー」
レクはそこの割って入った。
「どうだ親父、ダイスで決着をつけねーか」
レクはダイスを取り出した。
その表には剣、裏には盾、横に蜘蛛、
その裏に炎、そしてその横に珠とその裏に雷
このダイスで蜘蛛がでたら白いコマを戻してくれるか?
なんだと確率は1/6じゃねーか
俺が勝つに決まってる。
よし振るのはあんたか?俺か?
あんたでいいさ。
おやじはダイスをつかみとると思い切り放り投げた。
ダイスは二三回弾んでからころりところがると
ピタリと蜘蛛で静止した。
なんてこった。
まあゲームをするなら楽しくするんだな。
隙間風が少し吹き抜けて、
慌ただしい雑踏の中でレクは
礼も受け取らず消えて行った。
もしもあの時言っていた
セキトってやつに頼めば俺はもう一度
バルバラに会えるのか。
サファイアの赤い炎が街の片隅にゆれ、
くすぶりかけた情熱が
その燃え切らないおがくずのようにジリジリといった。
イエムはまた一歩、石段を上がっていく
デュオに会うために。
世界の矛盾を払う為に。