Subeatleoの自作ルーム
連載小説 静まりし二つの羽根 第5話
「レクの展開、鯨を追う男をかわす。」
レクは競馬場で買った緑のペンを取り出すとそれでいろいろとパズルを解きだした。
なんか頭がやけに冴えるな。
居酒屋のテレビでは
「捕鯨反対のニュースが繰り返し行われていた。」
居酒屋の男はレクに語り掛けた。
「白鯨を追てる男がいる、やつは危険だ。」
レクは紙を取り出すとそこに数字を並べた。
経路図がつぎつぎと描かれていく。
「そこでズボンよ。」
レクは静かに言った。
「まさかな、あんたに相談して良かった。
「おやじ○×でもしよう」
レクは言った。
「150KM CLEAR。
「どうやら俺の勝ちだ。」
オヤジは眉間に皺を寄せた。
「ちっ、約束通り100寛だ、また来る。」
「時の女神は微笑みやすいな。」
オヤジはレクに言った。
レクはオヤジに
「まあ、線対称だ、どちらか落ちるさ」
緑のペンでレクは六角形を描いた。
紙には正確に六角形が描かれた。
右と左を引けば座標はATANで出せる。
おやじ
ログなん、ちゃらか?
レクは言った。
「空間図形って言えよ」
次の日、レクはガードの仕事を依頼された。
トラックから水を引き
放水で地面の砂を流して住宅の積み上げ工事が終わった。
大工は言った。
「お疲れ、今日はこれで終わりにするよ。」
「ハンコを押してやる。」
警備終了のサインだ。
レクはサインを受け取ると帰路に着いた。
間違いない展開だ。
レクは紙に書いた数式の紙を
ハサミできりとりセロハンテープでつなぎとめていく。
そこに白い鯨の模型ができあがった。
「船に乗る者がいない。」
イエムは学校の帰り道、とある神社の片隅で猫を見かけた。
子猫は雨風に負けてぶるぶると震えている。
レクは子猫の入れられた段ボールを抱えた。
雨が降りやまない。
いろいろ近所を回ったが引き取り手が結局、見当たらなかった。
「母さん、この猫を飼っていいだろ。」
イエムは言った。
「結局、私が世話することになるのだからもう。」
イエムは二階に上がると猫の様子を見つめた。
猫は震えている。
イエムは布団に入ると猫を呼び寄せ
抱え込みながら眠った。
今まで感じた事のない安眠だった。
次の日、目をあけると不思議なことに
猫はもうそこに居なかった。
猫は死ぬ前の姿を消して人に見せない。
近所のおばちゃんがイエムに言った。
「あんた早く友達作りなよ。」
わけのわからない事が世の中は多いが
その夜の安らぎだけはレクは忘れていない。
次の日、父がお盆に田舎の法事があると言った。
イエムは祭壇に手を合わせ、必死に祈った。
「猫が帰りますように。」
それは後になってみれば叶わない願いだった。
父親が電気屋でビデオを買ってきた。
「お前、使ってみろよ。
これ録画したやつをDVDにできるのだぞ。」
近代の美というものは恐ろしいな。
父親がぶつぶつ言いながら感心している。
家の扉のキーを回すとロックが開き
今日もイエムは学校に向かった。
どこか夏の匂いがしていた。
蝉が勢いよく鳴いている。
学校の帰り道、イエムが公園の脇のあたり
川沿いの細い道を歩いていると
一輪車に乗っている少女がばたりところげおちた。
少女は声をあげて泣いていた。
イエムはかけより、少女の一輪車を持ち上げ
少女の手を取り、抱き起した。
「どこも怪我はないようだよ。」
イエムは言った。
少女は泣き止んだ。
すると河のほとりから祭囃子、太鼓の音が聞こえてきた。
にぎやかな音だった。
ころんだり、おきたり、さがったり、のぼったり。
太鼓のトーンがいろいろに変化していく。
川で釣りをしていた男が棹と浮きを見つめて言った。
「今日は祭で休業かな。」
瞳の回廊 サルーインの心が眠る回廊。
走馬灯に二つ目の光がともった。
するどい光線が前を照らし出した。
「告白、選ばれし乗り人と24の個性」
イエムがベッドで横になっていると
イエムの頭に声が響いた。
「我が名はサルーイン
汝、時の船を漕ぐ者
灯篭に明かりを点して我が道を照らしては頂けぬか?」
イエムはあたりを見回した、人影は見当たらなかった。
「我は瞳の回廊の大地の奥に眠る。」
「24の灯をともし時、我はよみがえりを得る。」
イエムはどこか安らぎを覚えるその声を信じた。
「いいよ、やってみるよ」
「我の宿りし瞳の回廊は戦火の深い地である。」
どうすればそこに行けるの?
「すみし川に月が映る頃合いに答えよう。」